投稿:舩生好幸(Primary-f/向実庵代表、ファゴット愛好家・研究家)2024.6.30
(更新:2024.7.10)
ファゴット(Fg)はヴィブラートをかけて表情豊かに演奏できる楽器です。
ソナタや協奏曲、またオーケストラの独奏などでは主役として、情感豊かに歌い上げる演奏も披露します。
私が20代のころ、お手本だったのはやはりC.トゥーネマンやM.トゥルコヴィチといったファゴットの世界的ソリストの演奏でした。
「自分もあのように自由に、表情豊かに演奏できるようになりたい」と、大いに刺激され、練習に励みました。
〇オーケストラのFg奏者のヴィブラート奏法の歴史は半世紀ほど?
以前、ベテランのプロ奏者から伺った話では、オーケストラのFg奏者が積極的にヴィブラートを使うようになったのは1970年代後半からとか。
それを聞いて1960年代ー70年代初め頃のカラヤン指揮ベルリン・フィルの録音を聴きなおすと、どうも1番Fgは独奏でもヴィブラートをかけていない様子です。
現在、世界中のオーケストラの1番Fgが、独奏や目立つ部分でヴィブラートを活用していることを考えると、意外に歴史の浅い演奏法、という印象を持った記憶があります。
また、伝統を重んじるウィーン・フィルは、音色の豊かさなどを引き出す目的限定でしょうか。近年でも1番奏者が独奏で、本当に必要と思われる場面に限り、「かけているかな?」と、注意して聴くとようやくわかるくらい控えめにヴィブラートをかける、という印象があります。
〇ヴィブラートをかける場面は
私の場合、ヴィブラートをかけて演奏する場面は、自分が「主役、もしくは主役の一人」としてふるまう必要がある場面、といった感じです。
オーケストラの中でFgに求められる役割は、「引き立て役」であることが大半です。
自分が主役として目立つことよりも、ほかの楽器やパートを引き立たせることが大切であることのほうが多いです。
それもあって、オーケストラなどの合奏の中では基本的にストレートな音で演奏し、Fgの独奏や目立つ場面で、曲想や周囲との兼ね合いを考えたうえ、かけたほうが望ましい、と判断できる場合ヴィブラートをかけて演奏しています。
また、少人数で演奏する室内楽などではオーケストラよりも積極的にヴィブラートをかける機会が多いです。
「主役、もしくは主役の一人」としてふるまう機会がより多くなるからです。
〇ファゴットの音の特性や役割とヴィブラート有無の判断
Fgはヴァイオリンなどの弦楽器と異なり、ストレートな音にも十分に豊かな響きがあります。
そして和音や低音部を構成するメンバーとして演奏する場面では、ストレートな音のほうが周囲と調和しやすいなど、望ましい場合も多いです。
また、独奏であっても「表情豊かに、美しく歌い上げる」ことばかりが求められているわけでもありません。
ストレートな音がふさわしい独奏も中にはあります。
なので、ヴィブラートをどこでかけるか、かけないのか、を判断するのは常に注意深く、微妙な作業になる、と感じています。
(Primary-f/向実庵 代表)
*ご参考:ヴィブラート奏法で演奏している音源ご紹介
ビートルズ時代のP.マッカートニーの作品をどうぞ。(旋律のパートを担当。)
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