~ロングトーン練習中に「指が回り始める」理由の考察~
投稿:舩生好幸(Primary-f/向実庵代表、ファゴット愛好家・研究家)2024.10.27

以前から経験していた現象ですが、本ブログを書くようになって、改めて気づいたことがあります。それについて深堀りしてみたいと思います。
〇ロングトーン練習中に指が回り始める
ロングトーン練習を進めている途中、指を動かすトレーニングはまだ行っていないのに、指が回りやすく、パラパラと音が出しやすくなってきます。
無論、そのあとの音階練習や分散和音の練習を行うと、スムーズに演奏できる準備が確実になりますが、このようにロングトーン練習中から指が回るようになってきます。
この体験から、指が回るようになるには、指の動きの良し悪しだけが問題なのではないのだ、と改めて認識しました。
〇細かい音の演奏であっても、まずは楽器を十分に鳴らせることが重要
たとえば、チャイコフスキーの交響曲第4・5・6番といった作品を演奏すると、ファゴットにも弦楽器と同様に細かい動きが要求されます。
20代のころの私などはそのような楽譜に目がくらみ(?)、書かれたとおり音を並べようと四苦八苦してきた次第ですが、今、冷静に考えますに、
細かい音を楽譜どおり正確に演奏できるためにも、まずは十分に息が入って、楽器を十分に鳴らすことができなければ音の粒がそろった演奏にはなりにくいでしょう。
細かい音で構成されるフレーズの演奏でも、楽器が鳴ることが大前提で、指が回ること=運指は、音を切り替えるきっかけ程度のものかもしれません。
〇クルマの例:「ステアリング操作」は「曲がるためのきっかけづくり」
ここで思い出したのは、全く異なる分野、クルマの運転です。
カーマニア向けの雑誌などでは、
「コーナリング時にステアリングを切ることは、曲がるためのきっかけ作りに過ぎません。
スムーズに曲がるためには、アクセルやブレーキをタイミング良く操作し、クルマに蓄えられている運動エネルギーを効率よく活用しましょう。」
といった、プロドライバーによる解説記事が掲載されることがあります。
いささか乱暴かもしれませんが、クルマのコーナリング時のアクションと、ファゴットの細かい音の演奏時を比べてみますと、
「ステアリングを切ること」≒「指の動きで音を切り替える」=きっかけ
「クルマに蓄えられている運動エネルギー」≒「息を吹き込み楽器を鳴らすこと」=より本質的な要素
と、共通項でくくることができるかもしれません。
(細やかな音を正確に演奏しようとする指使いそのものにも周到な準備や鍛錬が必要ですが、ここは、わかりやすくするため割り切った表現にさせていただいています。)
そう考えたことから、
「細かな音を思い通りに演奏するためにも、まず大切なのは楽器を十分鳴らすこと。」
と言えるのではないかと思うようになりました。
だからこそ冒頭に書いた、ロングトーン練習の最中に指が回りやすくなる現象が起こるのではないか、という次第です。
〇まとめ・指が回るようになるためにもロングトーン練習は役立つ
これまで私自身、「不器用で指が回らない。悪いのは指のせい」と考えることが多かったわけですが、上記の体験に照らして、
「指が回るようになる」ためには「楽器に十分に息が入って楽器が鳴ること」が大前提といえるのではないかと思うようになりました。
そのため、指が回るようになるためにも、楽器を鳴らすこと=ロングトーン練習の重要性を再認識した次第です。
一方、音階練習など指をスムーズに動かすためのトレーニングの重要度が下がったわけではありません。そちらの練習にも今まで通り取り組むようにしております。。
(ご参考ブログ)
(Primary-f/向実庵 代表)
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