投稿:舩生好幸(JRCA登録QMS審査員補)
■ISO9001QMSは他マネジメントシステムの土台となる
QMS審査員やQMSコンサルタントなど業界関係の方からは、ISO9001品質マネジメントシステム(以下ISO9001QMS)は、「他のISOマネジメントシステム構築の土台になる」といった発言も聞かれます。
それは一つには、ISO9001QMSが組織に合わせて比較的柔軟に構築できる仕組みといえるからではないかと思います。
さらにISO9001QMSには、他のISO規格に基づくマネジメントシステムと、その構築や運用の仕方に共通点があります。
そのため例えば、ISO9001QMSに続いて情報セキュリティマネジメントシステム(ISO27001 ISMS)や、環境マネジメントシステム(ISO14001 EMS)を構築しようとするなら、先にISO9001QMSを構築した時の経験が活用でき、ゼロから構築するよりも作業効率が上がるメリットがあります。
そして構築後の運用も、組織全体で見た場合、その「回し方」は基本的に同じです。
上記いずれのマネジメントシステムも、そのサイクルは、
・方針及び目標の設定→
・計画→
・運用→
・パフォーマンス評価(内部監査やマネジメントレビューを含む)→
・改善→
・次期の方針及び目標設定
のように回るといえます。
そのため、例えばISO9001QMSに続いてISO27001 ISMSを導入したなら、
・次期に向け「品質方針」を見直すタイミングには「情報セキュリティ方針」も見直す、
・内部監査の実施時に、「品質」と「情報セキュリティ」の内容を同時に確認する、
・定期的なマネジメントレビュー=経営者による振り返りも、品質と情報セキュリティをまとめて実施する、
等と、ISO9001QMSによって出来上がった枠組みに相乗りする形で運用を進めることも可能になり、効率的に運用できます。
(注:上記の例はQMSとISMSの適用範囲が一致している前提でご説明しています。)
■近年のISOマネジメントシステム規格は「同様な章立て」
また、2012年以降に発行されたISOのマネジメントシステム規格は、「附属書SL」という同じ”ルールブック”に準拠することとなりました。
その結果、規格の章立てである「箇条」や用語の定義などが共通化され、利用する際には理解や運用がしやすいメリットが生まれています。
上段でも触れた、ISO9001(2015年版)、ISO27001(2014年版)、ISO14001(2015年版)という3つのマネジメントシステム規格は、いずれも附属書SLに準拠しています。
そのため、ISO9001規格に普段から馴染んでいる方には、ISO27001規格やISO14001規格も、詳細は分からなくとも、その章立てを見れば、おおよその回し方=運用方法の概要は把握ができるものになっています。
その分、導入時のハードルが低くなっているわけです。
■トピック:ISO9001QMSは「事業継続管理」にも応用できる
また、新型コロナウイルス禍で事業継続計画(BCP)の重要性が改めて話題になっていますが、ISO規格にも、事業継続マネジメントシステムの要求事項としてISO22301(2020年)が制定されています。
このISO22301規格も附属書SLに準拠した箇条です。ISO9001規格をご存じであれば、事業継続マネジメントシステムの詳細はご存じなくとも、その箇条を見ればおよそなじみのある構成ですので、運用方法の概要は想像できるのではないかと思われます。
■まとめ:品質マネジメントシステムを導入すると「レバレッジ」が効く
上記のように、ISO9001品質マネジメントシステムに取り組むと、それに続いて情報セキュリティや環境、或いは事業継続管理など、企業等を取り巻く課題に対処できる「他の仕組み」も導入がしやすくなる=「レバレッジが効く」ことにお気づきいただけるのではないかと思います。
(Primary-f代表、JRCA登録QMS審査員補)
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